子供のころの話。
友人がアイドル雑誌の表紙を差し出しながら、この中で誰が好き?と尋ねてきた。
グループ名くらいは知っている少年たちが白い歯を見せて笑っている。しかしながら個々の区別がまったくつかぬ。もちろん名前もわからない。彼らが無個性 なのではなくて、自分の他人の顔を見分ける能力が極端に低いのだ。助さんと格さんの区別は当時からばっちりついていたのだが。
とは言え、友人の問いには答えるべきだ。誰が誰だかわからないということは誰を選んでも自分にとっては同じということ。適当に一人を指差す。この人、かな?
「えー、その人、唇厚いよ?」
友人は不満げである。顔の区別がつかないのだから、唇が厚いかどうかも自分にはわかりかねるし、唇が厚いと何が駄目なのかも理解の外であるが、ご不満なら回答を変更するのにやぶさかではない。じゃあ、この人、と指を当てる。
「えー、その人、目が細いよ?」
またハズレだったようだ。じゃあこの人で、と前の二人とは違う人を示す。
「そうそう!格好良いよねー!えへへ」
自分の感性の及ばない話ではあるが、友人が喜んでくれたなら嬉しい。良かった良かった。
ただ一つ、今でも気になることがある。
そのとき表紙になっていたアイドルは、三人組だった。表紙の写真には三人のほかに誰も写っていなかったのだ。
友人は、あの答えで本当に満足だったのだろうか……?
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