猫がわたしの顔の横で寝る。ちょうど耳に寄り添うので、息遣いや鼓動が聞こえる。
猫の鼓動はとてもはやい。人間の鼓動がどくどくどくどくというリズムなら、猫のそれはとっとっとっとっと忙しい。心臓が15億回打つと生物は寿命だという(人間は例外らしい)。やはりこの小さな生き物はわたしより早く逝ってしまうのだと少し悲しくなる。
でも心臓の鼓動が早いということは、時間の密度もその分濃いのではないか。桜の花の時期は人間にとってはとても短いけれど、猫にとっては心に刻むには十 分なほどの長さなのかもしれない。あっというまに移り変わったように見える春から夏の変化を、ひとつひとつ感じているのかもしれない。
同じ世界に生きていても、わたしの世界と猫の世界は時間の濃さが違う。見ているものも聞くものも感じ方も変わってくる。
けれど同じ世界に生きていて、同じ布団で眠る。この不思議。
というわけでね、我々は同じ世界にいながら別の時間を生きているわけだ。だから行き違いもあるわけだよ。
君の尻尾を踏みつけたのは悪かったが、そろそろ許してくれないかなあ。
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