ハンドルネームは検索すればいくらでも同名の方がでてくるが、本名がすこし珍しい。話題に困った相手が、名前の由来について尋ねてくる程度には一般的でない名前だ。
名づけたのは父である。聞きなれないと奇異な感じのする名であるため、周囲はやんわりと反対したが、高校時代から娘につけたかった名前だと主張されては引かざるを得なかったらしい。
いずれそのあまり聞きなれない名前を掲げて三十数年。娘は娘とはいえない年齢になった。
父方の親戚の法事にでたときのことである。
ごく親しい人だけのこぢんまりとした会食の席で、昔散々お世話になったおばさんと談笑する父。
「いやあ、でもおばちゃんの名前、いい名前やなあ。俺、平凡な名前が一番好きやわ」
……はい?
ぽかんと口を開けてそれを聞いているわたし。その後も、よくあるけれど優しげな相手の名前をべた褒めする父。
ところは大阪だったから、ツッコミ待ちだったのかもしれない。席も離れていたし、ハリセンの持ち合わせもなかったのでちょっとわたしには無理だった。申し訳ないことだ。ちなみにハリセンを携えて外出したことは人生で一度もない。これからもないだろう。
考えてみると、父が「平凡な名前が一番」になったのは、非凡な名前の娘が残念な成長をしたからではないかと思い当たった。そうだとしたらボケを流した以上に悪いことをした。でももう手遅れです。
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