穏やかな日常の裏に潜む恐怖。それは不可視でありながら、隙あらば我々を喰らおうとする。
これはその「恐怖」と遭遇した者の戦慄の物語。
その日は飲み会だった。会場は初めての店で、場所も幹事から教えてもらってたどりついた。
店のドアをやや緊張しながら開ける。中にいた店主と目があった。もちろん知らない顔だ。
ああ、何てことだ。あの時何が起こったのだ。初対面のはずの、その店主は、俺の顔を見るなり、言った。
「おう、ちょっと太ったんじゃねえか」
ええええええええええ。ちょっと待って。俺あなたのこと知らないよ?!でもその口調はたまにすれ違うだけとかそういう相手に対する感じではないよね?この人と親しく話したことあるのか?誰だろう?誰だっけ?思い出さないと!ええええでも誰だ?!ていうか、俺、太った?
あせる自分を尻目に始まる飲み会。店主は他の客の相手をするため行ってしまった。これ以上話をする機会もなさそうだし、まあ思い出さなくてもいいか。でも本当に覚えがないのだけどなあ。
宴は次第に盛り上がり、盛り上がり、やがておひらきの時間がやってきた。会計をすませて店を出て行こうとした自分にまたあの店主が近づいてきて、言った。
「あんまりデブるなよ」
だから、お前は誰なんだ。
以上、日本在住のTさんの体験談。
親しく声をかけてきた人のことを思い出せない上に、太ったと言われるなんて、怖い。本当に怖い。
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