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起きて日常、寝て日常。

 ここには破もなく急もなく、 とりとめなく節操なく知識なく事件もなく全て世はこともなし。

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2026.02.04 (Wed)
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時代劇好きのルサンチマン

 マスコミをあげてのお祝いムードの中、わたしはある過去を思い出し、暗澹としていた。そう、わたしがマスコミ嫌いになった決定的なあの出来事を。

あの時わたしは『遠山の金さん』を見ていたのだ。高橋英樹版の再放送だった。
悪人の暗躍とそれに巻き込まれる善良な人々。ある人は殺され、ある人は無実の罪を着せられる。
クライマックス、生き残った娘が悪人の手にかかろうとしたその時、颯爽と現れる遊び人の金さん。桜吹雪を肩に舞わせ、襲い掛かる敵を次々と倒していく。騒ぎに気付いた奉行所の役人が来るのを見届け、金さんは姿を消す。

次の場面はお白州である。奉行の前には悪人と善人が勢ぞろい。これから裁きが始まる。

『遠山の金さん』を知らない方に予め説明しておくと、実は善方に何かと力を貸していた「遊び人の金さん」の正体は、今まさに悪人を裁かんとしてる町奉行、遠山景元である。

白州に出ている悪人善人とも何故かそれには気付いていない。故に悪人は奉行の尋問に対してしらばくれる。自分たちの悪事を知っているのは今同じ白州にいる被害者と、どこの誰とも知れない「遊び人の金さん」だけなのだから。
「お奉行様、それは言いがかりでございますよ」
「大体そんな卑しい生まれの娘(被害者)の言うことを信用なさるんでございますか」
「証人だという金さんとかいう男もどこの馬の骨だか」
「金さんとかいう男が本当にいるのなら、ここに連れて来てください」
「そうだ、金さんをだせ!」
「金さんをだせ!」

再び解説になるが『遠山の金さん』の最高の見せ場はここである。決定的な証人がいないことを盾に好き勝手なことを言う悪役と、唇をかんでなすすべもない 被害者。悪人のふてぶてしさと被害者の絶望と視聴者の悪人への怒りが最高潮に達したとき、白州の上の奉行の口調が変わる。「おいおい、てめえら」と。

「黙って聞いていりゃ好き勝手言いやがって。金さんを出せだあ?そんなに会いたきゃ会わせてやろう。花のお江戸のど真ん中、見事に咲いた夜桜を見忘れたとは言わせねえぜ!」

奉行が片肌を脱ぐ。その肩には遊び人の金さんと同じ彫り物が!
なんとお奉行様と金さんは同一人物だった!観念する悪人。被害者の顔が驚きながらも輝く。
視聴者も大満足。この場面を見るためにこの数十分をすごしていたといっても過言ではないから。

さて、話をわたしが見ていた『遠山の金さん』に戻す。
お白州。とぼける悪人たち。遠山様の口調が変わるのを今か今かと待つわたし。

そこで。場面が変わった。

「○○さまが出て来られました!」
時代劇にはそぐわない、現代の病院の入り口。天上人に嫁いだ女性が、先ごろ生まれた自分の子供を抱いて出てきた場面だった。

あれ、リモコンのボタン押してしまったかな。チャンネルが変わってしまったようだ。わたしは慌てて『金さん』を放送しているチャンネルに戻そうとする。

しかし、どこにも金さんの姿はない。放映終了には早すぎる。新聞を見て放送局を確認してそのチャンネルにあわせる。映っているのはあの病院。
「○○さまが出て来られました!お健やかなご様子です!」

やっと、わたしは理解した。
このニュースは『遠山の金さん』を中止して流されている。まさに「中止」。『金さん』を途中で止めて、このニュースを。

怒った。わたしは本当に怒った。金さんが、遠山様が、正体を明かす場面の、そのカタルシスを奪われた。そのための数十分が否定された。踏みにじられた。完膚なきまでに。
開放されなかったカタルシスはルサンチマンとなり、その日からわたしはマスコミが大嫌いになった。

と、これが十数年前の話。
ここ二日くらいのマスコミのはしゃぎようは、この出来事を思い起こさせる。だからわたしは少し嫌な気分になるのだ。
昨日再放送の時代劇が特別番組でつぶれたのは怒ってはいない。最初からないのなら諦められる。慶事だから後味も悪くない。
しかし、あの出来事は。あれだけは。

まあ、十数年前の時代劇に関する恨みをいまだに引きずって、千文字以上もそれについて記述するわたしのほうがマスコミよりよほど痛いことはわかっているのだが。
というかほとんど『遠山の金さん』の説明じゃん。ウィキペディアでも引用して短くまとめろよ、と理性の声がいうけど、ええと、ほら、せっかく書いたから。
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2006.09.07 (Thu)
Category[日記]
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