自分、不器用ですから。
生き方はいざ知らず、手先が不器用である。細かい作業が苦手である。もちろん裁縫が苦手である。糸と針にはなるべく関わらないようにして生きてきた。
それでも人生にはどうしようもないことがある。例えば、お気に入りのシャツのボタンがとれてしまった時とか。
4つ穴のボタンを苦心しながら付け直す。もともとの針の痕を見ながら位置がずれないように。途中で糸がからまって布を通らなくなり、やり直したりもする。
丈夫に、なるべく粗の目立たぬように。穴を通し布を通し穴を通し布を通し。ようやく仕上げに近くなったそのとき。
ボタンの4つの穴を互いに隔てる十字になっている部分。
プラスチックがほろり、と崩れた。
並んだ4つの穴は、大きなひとつの穴に。
通した糸はたやすくボタンを開放する。
かくて、壊れたボタンと相変わらずボタンがとれたままのシャツが手元に。
自分、不器用ですから。
生き方はいざ知らず、物事の起こるタイミングがあまりに不器用である。
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