連れあいの話。
峠道を車で走っていると、歩行者がひとりいた。こんなところに珍しいと通常よりも注意を払う。
帽子にシャツ、チノパン風のボトム。サングラス。山歩きによくある服装だ。リュックは背負っていない。ならば荷物は手に持っているのかと目をやる。その手には。
その手には、青い、細い、プラスチックの。
ハエたたき。
山道で、アウトドア仕様の服装で、荷物も持たずに、ハエたたき?!
連れあいの混乱をよそに車は進み、見る間に遠ざかるハエたたきの君。
あれは何だったのだろう、と帰ってきてから都市伝説を語る口調で首を傾げていた。
PR