マーガリンをぬったトーストにかに風味かまぼこ、いわゆる「かにかま」をのせて食べるのが大好きだ。マッシュポテト(自作)トーストに次ぐ美味さ。いくらでも食パンが食べられて困ってしまう。
家人にもふるまったがあまりいい反応ではなかった。これは幸い。家族全員で際限なく食べ始めたら、かにかま代で破産する。かにかまは意外と値段が高いのだ。
油断して食べ続けたら、ついに冷蔵庫のかにかまが底をついた。
正確には今から食べるトーストにのせるほんの小さなかけらで最後。
赤いかにかまも今朝限り。おいしいかまぼこの手前たちとも、別れ別れになる食事。
次の買い物までかにかまトーストはお預けだ。
かにかまへのはなむけに丁寧に丁寧にマーガリンをぬる。かにかまは普段ならほぐしてのせるのだが、量が少ないのでかたまりのまま濃い味を楽しむことにする。トーストのすみにちょこんとのった赤。
これをテレビなど流しながら食べるのはもったいない。じっくりと味わっていただくべく手にトーストを持ち自室へ移動。
さてゆっくり隅々まで味覚を総動員していただこうと口を開けると。
トーストが、平坦なのだ。
マーガリンを吸ったトーストの金の草原。そこにおりたった南国の鳥のごときかにかまのかけらがないのである。かにかまの金と赤とがちるぞえな?
テーブルの上にはない。椅子のまわりにも落ちていない。台所から自室に至る道を逆にたどってもない。再び自室にもどっても見当たらぬ。猫が食べた様子もない。
忽然と。かにかまが消えてしまった。
最後のかにかまが。
食べ慣れているはずのマーガリントーストは、普段よりずっと味気なかった。
何時間かの後、かにかまが自分の履いているスリッパの底にはりついていたのを見つけた。
おそらく自室への移動時に落ちたのを踏んだものと思わぶああああああああああああああああああああ。
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