ウインナーの片端に縦に切り込みをいくつか入れて加熱すると、切り込みを入れた部分がくるんと外側に広がる。いわゆるたこさんウインナーである。
包丁で簡単にできるが、市販の専用器具もある。筒の中にウインナーを半分くらいまでいれて引き戻すと切れ込みが入る。あとは煮るなり炒めるなりすれば蛸型になる。
さてその専用調理器具を、小学生のわたしが手に入れたと思っていただきたい。
たこさんウインナーは数多い憧れのうちのひとつであった。原理も作り方もわからないが、とにかくこの器具にウインナーを通せばできてしまうらしい。ビバ文明の利器。さあその実力を見せてくれ。
と思ったかは定かでないが、わくわくしながら器具にウインナーを通す。
片方の端からいれて、三分の一、半分……全部、最後まで。
手元には縦に細く6つに割れたウインナー。蛸の面影もないではないか。せいぜい蛸の足に見えるかも、くらいだ。どういうことだ。不良品か。
首をかしげ、もう一本ためし、同じ結果を得、落胆し。
たこさんウインナー専用器具は、その後長く死蔵されることになる。
さて。
その専用調理器具をわたしが再び手にとったのは高校生になってからである。
小学生のころは最後まで通して失敗したが、途中まで切り込みが入ったらそれでいいらしいではないか。オーケー今度こそかのたこさんウインナーをこの箸にこの口にこの胃に。
張り切ってウインナーを入れる。途中で足が切れないよう注意しながら抜き出す。
できたのは、切り込みのはいったウインナー。
……たこさんではない。
どういうことだ。やり方は合っているはず。
首をかしげ、もう一本ためし、同じ結果を得、落胆し。
たこさんウインナー専用器具はもう一度、死蔵という名の眠りにつくことになる。
切り込みのはいったウインナーを蛸型にするには加熱調理が必要。
それをわたしが知るのは、もう少し先の話である。
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