本を読んでいるところに、連れあいが話しかけてきた。
「何読んでるの?」
推理小説。今ちょうど謎解きのところ。
「作者はなんていう人?日本人?」
翻訳物は苦手だから、日本人だよ。佐藤明(仮名)という人が書いた短編。
「よし、わかった!犯人は……鈴木だ!」
当てずっぽうで犯人の名前を当てるつもりらしい。せめて登場人物一覧を見せたいが、あいにくと一覧のついていない本だ。連れあいもそんなものはいらない、勘で的中させると意気ごんでいる。
とりあえず、犯人の名前は鈴木ではない。
「違うのか……。犯人の名前は、よくある名前?」
わたしの知り合いにはいないけど、よく聞く名前ではある。
「じゃあ、浅倉だ!」
確かに「アサクラ」は推理小説でよく見る名前だが、この小説には登場しない。
「えー……じゃあ、斑目(まだらめ)が犯人だ!」
平凡な名前だと言っているのに。「斑目」さんはある種の物語では好んで使われる苗字ではあるけれど。
いずれ、第六感で分かるわけがない。あと一時間人名を挙げ続けても、この小説の犯人を連れあいが指摘できるとは到底思えぬ。
「そんなに難しい名前なの?じゃあ犯人は誰なのよ?」
リチャード。
……。
「ずるいよ!!」
作者が日本人だとは話したが、日本を舞台にした話だなんて誰も言ってない。
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