裾がしぼれるようにパーカーに通されている紐が邪魔である。ぶらぶらしているとつい目がいって気が散るし、ボトムの中に巻き込んでしまったりもする。何より自分の豊かな胴回りとパーカーの裾の間にはたいしてスペースがないので用をなさない。パーカーに手袋、携帯音楽プレイヤーで雪かきをする習慣があるが、裾をしぼって着たことは一度もないのだ。文字通り、無用の長物。
切ってしまおう。
思い立ったが吉日。はさみを手に取り、勢いに乗り、リズムに乗って、ぶつり、と白い紐を切る。
一瞬の間をおいて、ぶつり、と耳に音が届く。
続いて遠くで車が走る音がする。
静かで、無音。無音?
そういえば。
音楽プレイヤーにつなげていたイヤホンコードの色も、白かった。
パーカーの紐が、裾でゆらゆら揺れている。
PR