外で写真を撮る。春である。ためこんでいた光と風を豪勢にばらまいたような季節だ。
肩をとんとんと叩かれて振り返る。
誰もいない。気のせいか。
またカメラをかまえる。被写体である草はゆらゆらゆれてなかなかピントがあわない。
とんとんと二の腕が軽く打たれる。
振り返っても、誰もいない。
日差しが照りつける。リュックを通じて感じる熱。
春である。
春は意味もなく胸が騒ぐ。あらゆるものが孵る可能性のある卵を温めているような胸騒ぎ。朝起きて地球の形が三角錐になっていても納得してしまいそうな予感めいた心の揺れ。
とんとん、と。
背中で音が。
春の卵の中には、何がある?
振り返っても、無人。
春は恐ろしい。いいものも悪いものも一斉に目覚めて、光に眩んだ目の前で、何が起こるかわからない。
光と光と光と風と風と風。
強い風。
背中をたたく、音。
使い慣れないリュックのファスナーに結んであった紐が、風にあおられて背中に当たっていただけだった。
どうしてリュックって、あらゆる穴に紐が結んであるのだろう。
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