流しの隅に黒っぽいごみがたまっていた。水道の蛇口の届かない位置だったので、手近にあったボウル状の容器で水を汲んで流そうとする。
ざあ。容器を傾ける。ごみは動かない。
ざあ。再び容器内の水で流そうと試みる。ごみはびくともしない。
ボウル二杯分の水に耐えるとは。これは相当の頑固な汚れとみた。重曹からクレンザーまでそろった我が家の猛者の出番だろうか。
ごみの状態を確かめるべく手でさわる。微動だになかったはずの汚れは、するりと移動して流れて消えた。
おかしい。軽くさわっただけで落ちてしまうごみが、何故ボウル二杯の水攻めに耐ええたのか。変だどうしてなにゆえに。手元に目をやって、その謎はとけた。
水を汲むために使っていたボウル状の容器は、ざるだった。
すくってもすくっても水のたまるはずのない容器で、自分は水を汲んだつもりで、水を流したつもりで。
やはり我が家にはいるのではないだろうか。狐狸とか妖精の類が。こんなことが自分の不注意のみによって起こったとは、考えたくないのだ。
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