暑い。暑くて寝られない。
6月にしてこの気温はなんということだ。6月に扇風機を使うなどプライドに関わると意地をはっていたが、どうしようもなくて結局押入れから引っ張り出してきた。口惜しい。わたしの意地など夏日の前では風の前の塵に同じ。塵でもいいから風よ吹け。
昼間はそれでしのいだが、就寝時は扇風機をまわすわけにもいかぬ。暑い。掛け布団が暑い。敷布団が暑い。
この時期にこのていたらくでは本格的に夏になったらどうなるのか。
昼の疲れを夜に癒そうとしても眠れない。疲れはたまるばかり。食欲も落ちるだろう。体力がなくなるから外にも出なくなる。少し痩せて色も白くなったわた しを、声のいい紳士が見初めてくれて、文通でもするようになるかもしれない。折々の便りを交わすわたしたち。しかしある日届いた紳士からの手紙。そこには いつもの床しい文ではなく、聞いたことのない単語といくつかの数字が書かれたメモが一枚。何かの間違いかと首を傾げるわたし。数日後外出から戻ると部屋が 荒らされている。レターボックスが持ち去られていることに気づいたわたしは、あのメモになにか秘密があるのではと思い始める。熱帯夜に襲撃される我が家。 炎上する水田。愛銃とともに脱出したわたしは、謎のメモをめぐる大きな陰謀に巻き込まれたことを知るのだった。
予想される今年の夏の波乱万丈さに陰鬱とするわたし。
やがて朝。目が覚めて(何だかんだでちゃんと寝た)お茶を飲み、歯を磨きながらふと気づいた。
自分のパジャマが、冬用の起毛素材であることに。
わたしの夏は、まだこれからだ。
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