T字路で信号待ちをしているとき、目の前を製麺所のトラックが通り過ぎた。荷台に麺類の名前が書いてあったので、製麺所の車だろうと推測しただけだが。このあたりは麺の名物が多いところなので、ああいうトラックは特に珍しくもないのだろう。
それにも関わらずそのトラックが目をひいたのは、見慣れない文字があったからだ。麺の名前の末尾にカタカナで「リ」。それに続けて漢字が二文字続いていたが、一瞬のことなので読み取れなかった。多分地名だと思う。
麺のあとに「リ」でどんな意味なのか。「リ」は後ろに続く言葉にかかるのかとも考えたが、カタカナ「リ」一文字に漢字が続く言葉はあまり一般的ではない。やはりあれは麺に続いて読む文字なのだ。
関係がないかもしれないが、この地域は蕎麦のほうが名物として有名なのに、あのトラックは饂飩(うどん)屋だった。それも奇異といえないこともない。不 思議といえば「うどん」をカタカナで書くのも珍しい。それがカタカナだったから、後ろの「リ」もカタカナだとわかったわけで。
そしてゆっくりと思い出した。
この近くにリンドウの産地があることを。
つまりあのトラックに書かれていたのは「ウドンリ○○」ではなくて、「○○リンドウ」。麺類ほど有名ではないが、このあたりで盛んに栽培されている花の名前であった。
間違いには無意識の願望があらわれるという説には反対である。しかし花と食べ物を間違えたあたりはいかにも自分らしいと認めざるをえない。
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