あぶらあげをまな板に置く。油ぬきをしようと、ざるを流し台に用意する。湯を沸かしはじめる。
あぶらあげに「油ぬき」という作業が必要だと知ったのは、20代も半ばを過ぎてからだった。
あの頃は何も知らなかった。今よりもさらに何も知らず、かつておぼえていた大事なことはことごとく忘れていた。
昔のことを思い出すのは、具合が悪くなる前触れ。
数日のうちに風邪でもひくのかもしれない。
油ぬきに使うお湯が沸いた。
やかんから直接、ざるに水を注ぐ。
注ぐ。
……ざるにあぶらあげが、入っていなかった。
こういった失敗はいつものことで、何の前触れでもない。強いて言うなら、この日記更新の予兆。
お湯は沸かしなおした。
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