連れあいの寝言は、返答や相槌を要求することがしばしばある。こちらが寝ていて返事をしないと起こされることさえ珍しくない。ここまでいくと寝言ではなく「寝ぼけ」だ。
起こされたほうは腹立たしく、さらに寝不足の気分になるのに、起こしたほうは朝にはけろりと忘れている。何とも不公平だ。
ある日。午前2時半。寝言で起こされる。
「地震、すごかったね。震度7以上だったみたいよ」
連れあいの出身県で地震があった矢先のこと。やはり気にしているのだと可哀想になる。
同じ日。午前4時。揺さぶられて起こされる。
「大変だ!起きて!山火事だ!燃えてる!」
山間で育った連れあいには山火事は恐怖であろう。それは夢だからとなだめる。
別の日。午前2時。大声で起こされる。
「ちょっと!そこに置いてあったお菓子、どうして取った!?俺のなのに!ひどいよ!」
車ででかけなければ菓子など売っていない村なれば、菓子を盗まれるのはつらかろう。不憫だ
と考えようとしたが、起こされたうえに盗人呼ばわり、しかも盗ったのが菓子ときてはどうにも我慢がならない。狭量と自覚しているが、睡眠は大事なのだ。その大切な時間を。菓子で。存在もしない菓子で。大体現実で相手の菓子を勝手に食べるのは連れあいのほうではないか。
少し声を荒げてそんなものは始めからないと答える。「そんなはずはない」「それは夢だ」「いや確かにそこに置いた」「寝ぼけて人を菓子泥棒とは何事か」と5分以上言い争った。
寝ぼけている人間に真剣に反論して、睡眠時間を無駄にしているのは誰か。
相手は朝には何一つおぼえていないというのに。
寝言との喧嘩は、いつだって負け戦。
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