昼も近い午前。暑さに目を覚ましてもなお眠く、着替えもせず顔も洗わず髪も梳かずぼんやりとしていたら、玄関のチャイムが鳴った。
アスファルト塗装などをしている会社の者だと名乗る客人。
セールスだ。なんと断ろう、と差し出された名刺に目をやりつつ考えると、男はわたしに言った。
「お父さんかお母さんはいらっしゃいますか」
は?父母はいるかとおっしゃるが、わたし自身が人の親でもおかしくない年齢である。
とりあえず、外で仕事ですと答えると、ではまた来ますと客人は去った。
さて。
お父さんかお母さんはいらっしゃいますか、とは。
この家の最高権力者は義母である。そこを理解しての発言だとしたら、父のいない我が家に「お父さん」という選択肢は不適切だ。先ほどのお客様は、我が家の事情を知らないと考えられる。ならば、いい年をしたわたしに家庭内での決定権がないことを見破れるはずがない。
とすれば、さきほどの言葉は、わたしが年若い子どもだと思って発せられたものであろう。なんということだ。小学生のころから社会人に間違えられ続けたわたしが、年齢より若く見られた。
セールスを断るには、子どものふりをすればいい。
先ほどは、日も高いというのにパジャマにぼさぼさ頭だったから、社会性のある大人には見えなかったのだろう。
四六時中寝巻きでいるわけにはいかない。人に見せられる程度に子どもに見える服装が、セールス撃退の鍵と見た。
子どもらしい格好、子どもらしい格好ねえ・・・・・・。
タンクトップに半ズボンに虫取り網とか?
30歳過ぎて家の中で虫取り網。セールスどころか家人まで退散してしまいそうではある。
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