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起きて日常、寝て日常。

 ここには破もなく急もなく、 とりとめなく節操なく知識なく事件もなく全て世はこともなし。

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2026.02.06 (Fri)
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面影は手の中で流れて消えた

 暦のうえではとうに春だが、当地はまだ冬である。
それでも今年の冬は暖かい。朝こそ氷点下10度を下回るが、昼には0度を超える。真冬日がほとんどないのだ。朝汲んで室内に置いた水が夕方までの間に凍ってしまうこともない。 
しかし雪は多い。寒くはあっても積雪は比較的少ない土地であるはずが、目覚めたら膝上まで雪が積もっていたことも何度かあった。季節にみたびも行えば十分のはずの屋根の雪下ろしを、既に片手の指では足りないほどやっている。
多すぎる雪はロマンチックなものではありえず、ただ戦い破れ屈服し通り過ぎるのを待つ対象である。雪かきは重労働で、圧雪が凍った路面は恐怖だ。積もった粉雪が風で舞い上がる地吹雪は氷で目隠しされたかのように視界をさえぎる。なにかにつけ雪は恐ろしい。
ただ、まったくもって癪なことに、冬と雪はやはり美しく詩的でもある。何もない空より無数に落ち来る白のかけら。雪の夜のほの明かり。きりきり冷える朝 の空の透明。積雪の上を歩く軋み。何ものかの足跡をたどる遊戯。音をこもらせる静けさ。万物の凍てつく清潔。地吹雪すらしかと目をあけて観察すれば、天馬 の群れのごとく駆け抜ける。まことに玲瓏にして気高い冬という季節。

当地はまだ冬であるが、暦のうえではとうに春である。
道を覆っていた氷が薄くなる。雪をふめばぱしゃぱしゃと水のはねる音。雪はみぞれに、みぞれは雨に、そしてまた雪がまじり。
馴れない動物が少しずつ寄ってくるように、次の季節が見え隠れする。
季節はめぐるが、同じ季節は来ない。今年の冬は今年で終わり、来年の冬はまた別の冬だ。だからちゃんと見て聞き感じて語らわなければならない。今だけのこの季節を。

そんなわけで。
わたしが先ほど玄関先で「駄目だよ」とか「早く入ったら」とひとりごちていたように見えたのは、去りつつある季節と語らっていたのである。
決して断じて誓って、薄暗いなか、屋根から落ちた雪の塊を飼い猫だと見誤って話しかけていたのではない。

抱き上げた雪は冷たく、腕の中で水まじりになって崩れた。
もうすぐ春。
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2009.02.25 (Wed)
Category[日記]
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