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肩にかけた鞄がずりさがってきたので、ストラップをかけなおす。
はずが。
手は肩のベルトを素通りしてその勢いのままわたしの右頬をぶん殴った。
さすがのわたしも自分に殴られるのは初めての経験だ。
じっと手をみる。
人間に秘められた可能性を感じ、くらくらした。
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いつもより早い時間に床に就いた。
体は疲れているのだが、眠れない。意識が冴え冴えとして眠れない。
仕方がない。本でも読もう。枕元の文庫本を取り、手探りで栞をはさんでいるページを開く。
真っ黒に塗りつぶされた、読みかけのページ。
あれ?読めない?
一瞬戸惑った。が、すぐに思い当たる。
電灯が、点いていない。まわりは真っ暗。
意識は冴えていない。ちっとも冴えていない。
おとなしく目を閉じて、さっさと寝よう。
朝。連れあいを起こす。
「おはよう。朝だよー」
「おう!おはよう!」元気な返事。寝起きの悪い彼だが、今日はさわやかに目覚めたようだ。さらに彼が言うことに。
「で、俺、昨日、捕まったの?」
「は?」
「警察に追われて崖から落ちたじゃない」
目を覚ませ。ここは崖の底ではなく君の部屋だ。
休日に昼まで寝ていた連れあいを起こす。
「もうお昼だよ。お昼ごはんどうする?食べる?」
「うーん。いいや、いらない・・・・・・」目を閉じたまま続ける。
「スペースシャトルでケーキ食べるから」
帰って来い。
犬の首輪についた鎖をはずして、散歩用のリードにつけかえた。
さあ行くよ!
勇んで走り出す犬。
遠ざかる犬。
わたしの手から垂れ下がるリード。
リードの先の金具につながれた、さきほどまで犬をつないでいた鎖。
散歩のはずが、ちょっとしたマラソンになった。
外出先で読む本にはブックカバーをかける。
今使っているカバーは、無地の不織布で、上部にしおりがわりのリボンが垂れ下がっている。読みさしのページにこの長いリボンをはさむわけだ。なかなか便利で重宝している。
今日、読みかけのページに挟んでおこうとカバーの背表紙上部あたりを指で探るが、リボンがない。
本文から目をあげて、カバー上部を見てみるが、やはり見当たらぬ。
つくりの簡単なカバーだから、リボンを縫いつけたところがほどけて、とれてしまったのかもしれない。
では何か栞代わりになる紙切れでもないかと、本を額のあたりまで持ち上げて、膝に目を落とす。
その視野へ、白いリボンがぶらさがった。
リボンは、今まで読んでいた本のカバーの背表紙下側から伸びて、ひらひらとなびいている。
ブックカバーが、上下逆にかかっていた。
犬を連れて近所をひとまわり。
家に戻って庭で水やり。
本日の午後もいつもどおり。
ふと気づく。
下半身がパジャマのままの自分に。
どおりで散歩の途中、鳥が「格好」「格好」と騒がしいわけだ。
世界はところどころ深く欠けていて、闇すら明るく感じられる深淵を覗かせる。
一瞬で通り過ぎた車がつけていたプレートの文字。
「Pizza of Death」
死のピザ・・・・・・!
確かにあれはカロリーとカロリーとカロリーで出来ているイメージだが。
手に持ったスナック菓子が急に重く感じられた。
欠けているのは世界ではなくて、わたしの認識力ではないかな。
pizzaではなくて他の単語だったのではないかな。
そんな疑いもまた、世界の亀裂。
車ばかり見ていたせいで、はまった側溝もまた亀裂の一種。
ライスの量で値段が変わるカレー屋。
ランチタイムは、ご飯おかわり自由。
敵を知り己を知れば百戦危うからず。
獣の如くいざ喰らえ。
連れあいがプラスチック製のごみ箱を買った。
付属の説明書で注意事項を確認。
「ええと、本来の用途以外に使用しない。これはオーケー、と」
ごみ箱として使うつもりだから、問題ない。
「硬いもので磨かないでください。あまりごみ箱を磨くことってないだろ」
大掃除で軽く洗うくらいか。
「本体内に溜まった水分は取り除いてください、だって。水が溜まるようなものは普通いれないよね」
確かに。
「ごくまれに塗料でかぶれることがあります、って書いてある」
プラスチックの塗装でかぶれるとは、化学物質アレルギーは大変だ。
しかしその注意書きはまるで。
「ああ??塗料に括弧書きで『漆』ってある!?
うわあ!標題にも『漆器の取り扱いについて』って!」
まるで漆器の説明だ、と思ったら本当にそうだったようだ。
「これ、どう見ても漆器じゃないよな?」
心配そうな連れあい。
半透明に青のグラデーション塗装の漆器はなかなかないだろう。あったとしても1980円で買えるとは考えられぬ。
メーカー様へ。
製品には適切な説明書を添付願います。消費者が混乱します。
余談だが、ごみ箱の底に本来の説明書きがあり、それを読んだ連れあいがしょんぼりと言った。
「耐寒、マイナス5度までだった・・・・・・」
真冬は軽く0度を下回る彼の部屋で、ごみ箱はどうなってしまうのか!
結果は冬の増刊号!刮目して待て!
暑い。暑くて寝られない。
6月にしてこの気温はなんということだ。6月に扇風機を使うなどプライドに関わると意地をはっていたが、どうしようもなくて結局押入れから引っ張り出してきた。口惜しい。わたしの意地など夏日の前では風の前の塵に同じ。塵でもいいから風よ吹け。
昼間はそれでしのいだが、就寝時は扇風機をまわすわけにもいかぬ。暑い。掛け布団が暑い。敷布団が暑い。
この時期にこのていたらくでは本格的に夏になったらどうなるのか。
昼の疲れを夜に癒そうとしても眠れない。疲れはたまるばかり。食欲も落ちるだろう。体力がなくなるから外にも出なくなる。少し痩せて色も白くなったわた しを、声のいい紳士が見初めてくれて、文通でもするようになるかもしれない。折々の便りを交わすわたしたち。しかしある日届いた紳士からの手紙。そこには いつもの床しい文ではなく、聞いたことのない単語といくつかの数字が書かれたメモが一枚。何かの間違いかと首を傾げるわたし。数日後外出から戻ると部屋が 荒らされている。レターボックスが持ち去られていることに気づいたわたしは、あのメモになにか秘密があるのではと思い始める。熱帯夜に襲撃される我が家。 炎上する水田。愛銃とともに脱出したわたしは、謎のメモをめぐる大きな陰謀に巻き込まれたことを知るのだった。
予想される今年の夏の波乱万丈さに陰鬱とするわたし。
やがて朝。目が覚めて(何だかんだでちゃんと寝た)お茶を飲み、歯を磨きながらふと気づいた。
自分のパジャマが、冬用の起毛素材であることに。
わたしの夏は、まだこれからだ。