高いところから飛び降りてきた猫が、わたしの顔に着地した。
猫の爪で顔に傷ができたようだ。鏡を見ると、頬に一筋、薄く血がにじんでいる。
頬に斜めについた傷。その筋の人をカリカチュアライズしたかのよう。
これは二つ名を名乗るべきいい機会だ。「孤高の魔術師」とか「遠雷の弓兵」とか一度やってみたかった。この顔なら少々恥ずかしい二つ名も許されるに違いない。
よくあるのは、その人の特殊能力をあらわす名だ。「炎の~」とか「世紀末救世主」とかありそうである。
わたしの特殊能力と言えばもちろん。
ええと。
特筆すべき能力がないので、別の視点から考えよう。
能力ではないが、本人の特徴を示す異名もある。「うっかり八兵衛」とか「ハニカチ王子」とか。後者は少し覚え間違えている気もするが本筋には関係がないので放っておく。
自分の特徴を書き出しつつ、そこからひねりだしてみる。
粗忽:忘却の求道者、順序を狂わせるもの(オーダーブレイカー)、うっかりアマモリ
注意力散漫:放浪する視線、遠くを聞くもの、
不器用:予測されし結果の破壊者、
怠惰:目覚めぬ豚
経済観念欠如:トレジャールーザー
どうも締まらない。「うっかりアマモリ」は韻を踏んでいてなかなかいいが、「うっかり」は大家がいるので使えない。
そういえば、ある時代劇で、元締「寅」の座を狙う敵が「猫の○○」という名だった。自分が目指すところの一段下で呼ばれるわけだ。この法則でなんとかならないだろうか。
わたしの目標。
例えば、格調高い文章を書く人。これを一段下にして、「駄文の製造者」。
例えば、器用になんでもこなす人。これを一段下にして、「ミステイクをこなす人」
例えば、家事の上手い人。これを一段下にして、「駄目シュフ」。
現状を表しただけになった。これは二つ名ではない。
どうにも難しい。センスがないのだ。
大体こういうものは、本人でない人が名づけてこそ。自分で名乗ろうとするからおかしくなる。
二つ名がつくような有名人になるまで、この話題はお預けだ。
という日記を用意していたら、何かのスポーツの中継で、選手にいちいち二つ名をつけていた。いわく「欧州一の優等生ジャンパー」。いわく「歩く詩人」。
エンターテイメントのプロであるテレビが、うちのような泡沫サイトと同じ手で笑いをとろうとするのはどうなのか。
PR